第十二使徒

シャトー・ディケム 1976

シャトー・ディケム 1976

貴腐の逸品、時を超えて

霧に覆われても見失わない、甘美の道。

国
フランス
地域
ボルドー(ソーテルヌ地区)
葡萄
セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン
年代
1976年
生産者
シャトー・ディケム
登場シーン
第44巻 #431〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ73/ 100

総合 73 / 100

神咲豊多香の手紙

私は歩いている。苔生した暗い森を抜けると太陽の照りつける丘が開けた。だが、その丘はまた霧に覆われ、私は歩むべき道を失う。私はまた歩いている。そこは静謐な寺院。歴史を刻みつけた長い廊下は、光が差してはとだえ、どこに続いているかも定かではない。私はふいに檻に閉ざされた。しかし、その檻は人を閉じ込め苦しめるための檻ではない。むしろ、その後ろに待つ喜びをより深くするための、神の仕掛けた余興なのである。私はしなやかな雌ライオンに出会う。鳶色の目でじっと私を見つめている。私に恋をしているのだろうか?その吸い込まれるような瞳。歩み寄ろうとすると、背を波立たせながら逃げ去ってしまう。私はまたひとり。そして、歩き出す。私は歩いている。色とりどりの果物や、花や、麦わら帽子、そして絹の織物や笑顔、溢れかえるそれらは昼下がりの市場だ。私はそれから総てを味わいながら、ゆっくりと時の流れを楽しむ。ゆっくりと気まぐれに食べ、気まぐれに言葉を交わし、そしてくつろぐ。私は泳いでいる。深い、底の見えない透明な泉を。果てしなく続くグランブルーの彼方に、私はゆっくりと滑り落ちてゆく。これは温もりなのか、それとも優しい絶望なのか。絶望だとするなら、もう決して戻ることはできないだろう。私はピクニックに出かける。誰と?決まっている。幼い頃の私とだ。年老いた私を、幼い頃の私が不思議そうに見つめている。そして自由に駆けまわる幼い私を、年老いた私が見守るように見つめている。どちらも同じ私。一本のワイン。私はパイプをくゆらしながら、遠い海を見つめている。日はとうに沈み、夕闇が視界を閉じ始めている。私はいつの間にか眠りに落ちていた。若き日の私は血気盛んに嵐の海を乗り越えてきた。歳を重ね、大地を踏み固めるように前に進んで、時に壁を登り坂を下り、泣き、笑い、怒り、喜んだ。黄昏を迎えた私は歩いてきた道を振り返るが、そこには何も見えず、ただ足跡だけが続いていた。決して戻ることのできない私ひとりの足跡、ふと目を覚ます。入れたばかりの紅茶は、まだ温もりを残していた。60年の歳月は、一瞬の夢に過ぎなかった。このワインはまどろみが連れてきてくれた長く、短い夢である。このワインは永遠であり、そして一瞬である。

テイスティングノート

シャトー・ディケムの1976年ヴィンテージを開けるなんて、特別な瞬間だよね。ボルドーのソーテルヌ地区で作られるこのワインは、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランがブレンドされているんだよ。甘口の極みとして、時間をかけて熟成された風味を楽しめるっていうのが魅力なんだ。

このワインは『神の雫』第44巻にも登場しているんだよね。その中での特別な使徒としての存在感が、物語の中でも一際輝いていたんだ。多くの人がこの巻で、その特別なニュアンスに魅了されたんだと思うよ。

グラスに注いでみると、濃いアンバー色が印象的だね。香りを嗅ぐと、蜂蜜や熟したアプリコット、それに乾燥したハーブのような深みのある香りがふわっと広がる。口に含むと、まるで絹のように滑らかな甘さが広がって、すぐに生き生きとした酸味が現れる。このバランスが絶妙で、一口一口が本当に贅沢な体験なんだ。

余韻も長く続いて、最後にほんのりと紅茶のような香りが心に残る。これを飲むなら、少し冷やしてから中庸のグラスで楽しむのがいいかもね。このワイン、飲むたびに新しい何かを発見するような、そんな奥深さがあるんだよ。