第九使徒
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

ポッジョ・ディ・ソットが紡ぐ、物語に刻まれた一口
第30巻 #294〜
- 国
- イタリア
- 地域
- トスカーナ州(モンタルチーノ)
- 葡萄
- サンジョヴェーゼ・グロッソ
- 年代
- 2005年
- 生産者
- ポッジョ・ディ・ソット
- 登場巻
- 第30巻 #294〜
総合 63 / 100
神咲豊多香の手紙
私は走り続けてきた。様々な困難を乗り越え、約束の地を目指して。困難の一つ一つは目の前に立ち塞がったその時は憎むべき存在だった。しかし振り返ると、それほど遠い昔のこともないのに懐かしく感じられる。今だからこそわかる。成功は「月」であり困難こそが「太陽」なのだ。太陽がなければ月は決して輝くことはない。同じように困難のない成功は、人の心をときめかせることはないのだ。成功は「果実」であり、困難は「大地」である。大地と格闘することなしに果実を手にすることは叶わない。同じように地に足のつかぬ成功などに喜びは伴わない。今ならばわかる。今ならばそれを伝えられる。勝利を手にし、果実を口にしようとしている私には。しかしどうだろう。それを後から来る者に伝えることは、困難であると同時に傲慢でしかないのだ。傲慢でしかないからこそ私は、その役割をワインに託したいと思うのである。足に残る心地よい疲れ、破れそうな心臓をなおも働かそうとする勝利への渇望。見よ、手の届くところに凱旋すべき門がある。弾ける汗、それは苦しみを乗り越えた者にこそ相応しい聖なる雫である。人々の歓声の声が出迎える最後のトラックを勇者は誇りを胸に駆け抜けていく。両手を天に突き上げ、勝利の雄叫びをもって迎えられるがよい。女神が授ける様々な紅い花の冠、勝者を讃える華やかな宴。このワインは秘めた情熱である。このワインは困難を乗り越える力の源である。このワインは華やかな成功を夢見る野心である。このワインは手にした果実であり、それを口にした若き勇者の高揚であり、忘れ得ぬ「勝利の余韻」である。
聞いとけ。グラスを傾けた瞬間、これはただの赤じゃないと鼻が先に吠える。酸と果実が押し合い、タンニンが背骨になって、余韻がなかなか帰ってこない。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(2005)——飲んだら誰かに話したくなる、そういう熱量の一本だ。