神の雫

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シュヴァリエ・モンラッシェ

シュヴァリエ・モンラッシェ

ミシェル・コラン・ドレジェが紡ぐ、物語に刻まれた一口

第18巻 #169、#170

フランス
地域
ブルゴーニュ(ピュリニー・モンラッシェ村)
葡萄
シャルドネ100%
年代
2000年
生産者
ミシェル・コラン・ドレジェ
登場巻
第18巻 #169、#170
626677酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ57/ 100

総合 57 / 100

神咲豊多香の手紙

私は今、孤高の頂に佇んでいる。この清冽なる待機、今、私の頭上には空の他、何もない。眼下の峰、総てはひれ伏すように横たわり、岩肌に張りつく白銀は絹のドレスを纏うかのように滑らかに輝いている。ふいに涙がこみあげた。その意味を探るべく私はこの頂に至るまでの道程を振り返った。常に困難でありながら堪えきれぬほどの希望、そして何より魔物に魅入られたような執念に駆り立てられ私は頂を目指したのだった。朝日に色づきはじめた高峰を見上げながら第一歩を踏み出した。挑む者を試すような静けさ、巨人はただ見下ろすのみだ。私は「ドン・キホーテ」のように挑みかかる。はやる気持ちを抑えながら、踏みしめるように頂を目指す。するとどうだろう。山は刻々とその表情を変え、時に笑顔、時に穏やかさを見せ、そして時に荒ぶる魂をもって牙を剥く。しかし私は諦めない。理想と希望、そして魂の求むるがままに私は岩にしがみつき滑る雪を踏みしめ、ひたすら高みを目指してゆく。あと少しあと少し、魂は飢え、渇き、聳え立つ頂以外、何ものも目に入らない私を嘲るように山は巨大でそして美しく沈黙している。絹のヴェールに覆われたような頂上は時折、視界に現れてはまた消え近づいたと思えば逃げ水のようにまた遠ざかる。ああ山よ。お前は魔物か。それとも神なのか⁉︎どれだけの時が流れただろう.....私の手は気がつくと頂をつかんでいた。辿り着いたのだ私は。なんという至福、なんという透明。豊かさも冷たさもこの世の複雑さも、あるいは優雅さも。この頂から総て鳥瞰できる喜び。私はそれを胸いっぱいに吸い込み、そして山を後にした。遠く高嶺を望めるところまで来て私は振り返った。孤高の頂は再び神秘に包まれ私を誘っていた。「もう一度いつかまたおいで、今度こそ教えてあげるから」。私は確かに聞いた。あれは幻だったのか?あの光景の総ては夢幻に過ぎなかったのか。それを確かめるために、いつかまたあの孤高の山を目指したいと切望せずにはいられない。今あの孤高のワインを飲む時に、ただひとつ言えることがある。いかに高い理想を持ち、いかに大きな期待を胸に味わったとしても、そのワインには決して失望することはないだろう。

聞いとけ。グラスを傾けた瞬間、これはただの赤じゃないと鼻が先に吠える。酸と果実が押し合い、タンニンが背骨になって、余韻がなかなか帰ってこない。シュヴァリエ・モンラッシェ(2000)——飲んだら誰かに話したくなる、そういう熱量の一本だ。