神の雫

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シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ

シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ

ドメーヌ・デュ・ペゴーが紡ぐ、物語に刻まれた一口

第11巻 #107

フランス
地域
コート・デュ・ローヌ
葡萄
グルナッシュ75%、シラー20%、ムールヴェードル5%
年代
2000年
生産者
ドメーヌ・デュ・ペゴー
登場巻
第11巻 #107
666677酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ63/ 100

総合 63 / 100

神咲豊多香の手紙

『第三の使徒』は私自身の記憶の引き出しにしまわれていた。そのワインは忘れかけていた小さな、しかし、かけがえのない感動を呼び覚ましてくれたのである。あれはいつの日の光景だっただろう。夏に向かう季節ーー草むらの中を中のいい友だちと駆け回りながら日が傾くまで思い切り遊んでいた。隠れん坊をしていた私はいつの間にか友だちの気配がどこにもなくなり空き地に取り残されてしまったことに気づいた。空き地には今は見かけなくなった白いタンポポが雑草の中に群生している。広がり始めた夕焼けがそれらを真っ赤に染めあげていく。どこからともなく夕食を作る美味しそうな香りが風に乗って漂ってくる。何かを焼いているのか?空き地の草の匂いと通じり合い、それらは上等なハーブやスパイスの香りとなって鼻をくすぐる。私は夕闇の空き地に独りきりになってしまった不安で団欒を思い起こさせる香りをおびた風によってどうしようもなく家が恋しくなる。帰ろうもう帰ろう、そう思って歩きだす。だが黄昏が迫る家並はどこも同じように見える。歩いても歩いても家は逃げるように遠くなる。道を見失いお腹がすいて途方に暮れて泣き出しそうになった私の肩に温かい手が置かれた。坊や....温かく大きな手の主は私に微笑みかけ不安を取り除くためにお菓子をくれた。その小さなひと塊を私は口に含んだ。ほっとするような甘さ。考えられないほどの芳醇さ。その温もりは一瞬の思い出として幼い私の胸に永遠に刻まれた。気がつくと私は家の前に立っていた。薄く開いた窓からは団欒の笑い声が漏れ聞こえる。愛し信頼する家族の温もりを求めて私は重い木の扉を開けた。

聞いとけ。グラスを傾けた瞬間、これはただの赤じゃないと鼻が先に吠える。酸と果実が押し合い、タンニンが背骨になって、余韻がなかなか帰ってこない。シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ(2000)——飲んだら誰かに話したくなる、そういう熱量の一本だ。